最低賃金(時給)の今年の改定額が、29日午後に全都道府県で出そろう見込みです。地方では、隣県同士で競い合うような大幅アップが相次ぎました。結果的に全国最下位に沈む可能性が高い秋田県の審議会で委員を務めた臼木智昭・秋田大教授(地域経済学)は、その様子を「まるでチキンレースだ」と表現します。どういう意味なのでしょうか。
――引き上げの先陣を切る形となった秋田県の最低賃金は、897円から951円になりました。上げ幅は54円(6.02%)と過去最大ですが、地方審議会ではどんな議論がありましたか。
労働者と使用者の代表、行司役である私たち公益委員で3日間議論しました。労働者側は67円、使用者側は28円の引き上げを主張しましたが、労使の隔たりは埋まらず、最終的には私たち公益委員が示した水準で決着しました。
厚生労働省の中央審議会は、都道府県を経済情勢に応じてA~Cの3ランクに区分けして引き上げ額の目安を示しますが、今年はいずれも50円でした。これを参考に各都道府県で検討するわけですが、ほかの地域の状況も耳に入ってきます。Aランクの東京は目安通り50円になりそうだ、Bランクでは目安に数円上乗せする県もある、というように。
Cランクの秋田として、東京やBランクの地域との格差を縮めるには、目安への上乗せを意識せざるを得ない状況でした。物価高や企業の支払い能力などを考慮し、最終的には「54円」が必要だと考えました。
格差縮小、地方に丸投げ
――上げ幅が大きく、賃上げ…